2014年2月19日水曜日

300(1)

流行りの300だ。

インターネット。
ニュースが並ぶリンクの中に大体ある。
「格差」「非正規雇用」と相性がいい300。

1000は特定の若者が言う。
「30代で1000」。新品のカバン、黒光りするスーツ、そのための化粧。

「働きたくないわ~」


年収が見えるようになった。
JR浜松町駅の南口。残った雪ですっ転んだ。
横断歩道に一歩踏み出したところで、後頭部からいった。
金曜の仙台出張のことを考えていた。

昔から身体の制御がうまくない。
子どもの頃は壁が動いてきたと自分からぶつかって泣き、
止まった車に轢かれていた。

頭の上に数字が表示されるようになった。

すぐ近くのガードを満員の京浜東北線大宮行きが通過する。
起き上がると、浜松町の駅前は3桁ばかりだった。
3桁は3桁と肩を組んで秋田屋の暖簾をくぐった。
3桁と3桁が手を組んで東京タワーに向かって歩いている。
3桁の集団に4桁が紛れているのは上司だ。静かな良い4桁だった。


ふと、大きい3桁の集団を見つける。
駅前に文化放送。駅の反対側に東芝と東京ガス。
ムカつく数字は見たくない。
顔を下げたり上げたりを繰り返しながら家に向かった。

300はただ家へ向かうのが似合う。

一家を支える300がビールを飲みながらカレーを温めていた。
奨学金の書類を出すために聞いた時と変わらない。7年前のことだ。
やはり300は非正規雇用と相性がいい。

テレビを見ている、バブルで4桁だった0とパソコンをやっている0。
120は仕事終わりで友達と遊びに行ったらしい。
この間、真っ白なベンツに乗った、桁の違う家に育った友達が迎えに来てたのには笑った。

とりあえずカレーをくちびるにつけたまま鏡を見に行った。
去年直したばかりの80のユニットバスで、自分の顔を見る。
これで逆さの数字が見えたらお話で済むのだが、相変わらず俺は口が開いていた。
昔「腐ったたれぱんだ」と言われたタレ目も健在だ。何も変わらないし、何も見えない。


300がどうのというのはキャッチ―だし、流行っているのもわかる。
確かに300に近い数字をたくさん見た。
果たしてこれは東京の、それもこの辺りに限ったことなのだろうか。
地域によって、どれくらいの差があるのか。

ほんの少しだけ、金曜日が楽しみになった。

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